この間テレビニュースで話題になっていたこのゲーム。
赤燭遊戯という小さな小さな会社が作った台湾産ホラーゲームです。これが今、世界でもかなり注目され、売れているんだそうで。
「ホラーゲームはいろいろあるけれど、どうして台湾のものがないんだろう?だったら自分たちで作ってしまおう!」と作ったのがこのゲームだそう。
こちらPCゲームなので、操作はマウスのみとなります。
1960年の台湾。この時期は蒋介石による白色恐怖が行われていた時代(これについては前回の記事で詳しく書きましたので、そちらをご参考のこと)。物語の内容にも、この白色恐怖が大きく関わっています。歴史的に見ても、ここまで悲劇の歴史を絡めているゲームもかなり珍しいと思います。
物語の始まりは・・・
ある日、高校2年生の魏仲廷(ウェイ)は授業中居眠りをしてしまいます。目覚めると、黒板に「台風警報」と書かれてあり、さっきまで大勢いたはずの生徒達は一人残らずいなくなっています。
「おかしいな・・・さっきまであんなに晴れていたはずなのに。しかもこの時期に台風?・・・・まぁいいや。みんなもきっと台風だから帰ってしまったんだろう」
学校から帰ろうとするウェイ。その途中に体育館を通り、体育館のステージの上の椅子には少女が眠っています。どうしてこんな所で眠っているんだろう?近寄り、少女に話かけるウェイ。
「あなたは?ここはどこ?私はどうしてこんな所に?」
その後(まぁ色々あって)、プレイヤーはウェイからこの少女方芮欣(レイ)へと変わります。この少女レイこそが、この物語の大きな鍵を握る人物となるのです・・・。
このレイをあやつってプレイヤーは学校の中を探索することになります。しかし学校の至る所には恐ろしい怨霊の姿が。
こんな風に、所々落ちているアーカイブを拾うと、怨霊をやり過ごす術を知ることが出来ます(怨霊とは戦うことはできません)。 基本は息を止めてやり過ごして回避する事になります。でも長い間息を止めていると、視界がぼやけてくるので、注意が必要です。
たとえばこれ↑には「夜の外出には気をつけなさい。もし恐ろしい怨霊と出会ったら、息を止めてそっと立ち去るべし」というような事が書いてあります。
「もしも怨霊が道を塞いでいたのなら、腳尾飯(キョンシー映画なんかに出てくるご飯に線香をさしたお供えご飯)で気をそらし、息を止めて速やかにその場から立ち去るべし」
個人的に一番不気味だったノッポの怨霊。この怨霊に捕まったら1回でゲームオーバーになります(イベント以外で即死攻撃を仕掛けてくるのは、このノッポの怨霊のみ)。この怨霊とは息を止めるだけでなく、目を合わせてはいけません。
この物語・・・かなり深いです。しかしあの歴史をこんな風に絡めてくるとは。恐れ入りました。
エンディングはグッド、バッド2種類あり、バッドはこの上なく後味が悪いですねぇ・・・。とはいえグッドエンディングだとしても、ものすごく悲しい結末なのですがね。
1960年代の台湾の学校の様子、思想、時代背景も知ることが出来、雰囲気もむちゃくちゃ良いです。 正直台湾でこんな良作が作れると思ってなかったですよ。台湾産ゲームなんて、これまで何があるの?ってくらい、存在を知らなかったし、正直興味もなく・・・。汗 こりゃ売れるわーと納得しました。
日本語版も開発される予定(開発中?)らしいけど、今の所は中国語と英語版のみだったはず。私は当然中国語版でしたが、「なんだこれ?」みたいな単語が、まぁめっちゃくちゃ多かったです(特にエンディングにつながる選択をしなければならない所・・・わっからん!!とパソコンで調べたり旦那に聞いたり。苦笑)。やっぱ中国語でゲームっていうのは難易度が高い・・・日本のゲームで遊ぶ台湾人の友達を尊敬する・・・苦笑
題名の返校というのは「学校へ帰る」という意味ですが、エンディングまで見たあとに、ああ、この題名はある2人の人物にとっての意味があったんだなーと題名の深さにも驚きました。
割と安価で買えるので、興味がある方にはぜひ一度遊んでいただきたいです。
ちなみに以下↓は私の考察です。ガッツリネタバレしていますので、これから遊ぶ予定の方はここで回れ右でお願いいたします~~~
1960年代の翠華高校。ウェイは2年生、レイは3年生の生徒でした。この時代は蒋介石の国民党による恐怖政治が行われていた時代。学校の中にも「反政府的な思想をもつ生徒はいないか」と軍隊上がりの白(バイ)教官を始め、数人の教官たちが常に目を光らせ、生徒や教諭を監視し、また生徒、教諭同士もお互い疑心暗鬼になっている、そんな時代です・・・
↑主人公の少女レイ
そんな中、ウェイの担任の殷(イン)先生は、こっそり読書会を開いており、ウェイもその読書会のメンバーの一人でした。読書会では、数人の生徒達を相手に正しい社会、政治のあり方等を説いており、もう一人教育指導教諭である張(チャン)先生もこの読書会を影ながら支援するメンバーでした。もちろんこのような読書会は、反政府的行為とみなされてしまうため秘密裏に行われているものでした。
そんな中、チャン先生はある女生徒の投げた紙飛行機を偶然拾います。そこには父が愛人を作り、家庭の中がバラバラなこと、現在の悩み等が綴られており、紙飛行機を投げた生徒はレイでした。チャン先生はレイの悩みを聞いたり、レイを気分転換にと映画や老街に連れ出してくれたりしました。そうしている内に二人の間に恋心が芽生える事になっていきます・・・。ちなみに物語の序盤で、ウェイが見つけて、レイに返してあげたネックレスはチャン先生がレイに贈ったものでした。
教師と生徒の恋。今よりももっと厳しかったこの時代、当然そんな事が許される筈がありません。この事は、チャン先生と共に読書会を開いているイン先生の知る所になり、イン先生はチャン先生に警告します。
「こんな事が世の中に知れたら、どういう事になるか・・・自分がどんなに危ない事をしているのかわかっているの?」
「僕自身の事だ。君には関係ない。口出ししないでくれ」
「そうはいかないわ、私達の運命は一連托生なのだから。」
そんな二人の会話を盗み聞きしてしまったレイ。
その日以来、チャン先生はレイを避けるようになってしまいます。もちろんこれはイン先生の話を聞き、レイはもちろん、生徒達を守らなくてはいけないという気持ちから、レイへの気持ちを絶つ事を決めたからだったのです。
イン先生とチャン先生の間には勿論何もやましい事もありません。イン先生の言った「一蓮托生」はもちろん「あなた達の行為のせいで、私や読書会に参加している生徒まで危険な立場におかれることになる。だからあなたが勝手な事をすると、私たちにも危害が及ぶ」ということを警告しただけだったのですが、レイは「イン先生はチャン先生の事が好きだから、私達を引き離そうとしているのだ!」と思い込んでしまうのです・・・。
イン先生さえいなければ・・・・
そうしてレイは学校の白教官に読書会の事を密告するのでした・・・・当然白教官はこの事を国に密告し・・・・
冒頭で、授業中だったイン先生(右)が白教官(左)に呼び出されて教室から連れ出される場面がありますが、あれはレイからの密告を受けて来たのでしょう。
その結果・・・・
イン先生は逮捕前に海外に逃亡(その後、海外を転々としたのち、癌により死去)
ウェイを含め、読書会に参加していた生徒達は長い刑期が科せられ・・・
そして・・・レイと相思相愛だったチャン先生は死刑に ・・・・
ウェイやその他の生徒が連行されていくのを学校の校舎の上から呆然と見つめるレイ・・・彼女は自分の行為がたくさんの人の人生を狂わせ、何より愛していた人の命を自分自身の手で奪ってしまった事を悔い、そのまま学校の屋上から飛び降り、自らの命を絶つのでした・・・・(ちなみにバッドエンディングでは、縊死。一番最初にウェイとレイが会ったとき、体育館の椅子の上に座っていたのは、その為だと思われる。)
というわけで、レイはすでに亡くなっています。彼女は過去の自分の罪を悔い、今もなお成仏することができず、廃墟となった学校を彷徨っているのですね。死んだあとも魂が学校に残り(帰り)、さまよい続けている。返校という題名が示す人物の一人がレイです。
さて、ウェイは序盤で死んでいるような扱いになっていますが、現実のウェイは死んではいません。現に終盤で学校内を歩く中年の男性が出てきますが、あれこそが現実世界のウェイなのです。ではなぜ、死んだような事になっているのか?
それはレイはウェイの判決(死刑ではなく、懲役)を知らなかったからなのだと思います。レイはおそらくウェイが捕まって連行されていく姿を見て、ウェイもチャン先生と同じく、捕まって死刑になったと思ってしまった。だからレイの世界の中で、ウェイは死んだ扱いになっているのだと思います。
(ウェイの最初の判決のあたりがちょっとうろ覚えなのですが、最初は死刑だったけど懲役に減刑されたんだったかなぁ・・・ごめんなさい、ちょっと曖昧です)
ウェイはその後、数十年の刑期ののち、恩赦が出て釈放されます(おそらく白色恐怖時代が終わった1980年代でしょう)。その後、あの数々の出来事があった学校に、思い出?を求めて今はすでに廃墟となった学校へと足を運ぶ(帰る)。つまりは返校という題名が示すもう一人の人物こそ、ウェイなのでしょう。
最後にすでに中年となったウェイと教室で向かい会うレイの魂は、この後学校から解き放たれたのかな・・・。
あれも亡霊とは限らず、ウェイが見ている幻影という事もあるけれど・・・。
私の考察はこんな感じです。
※画像はすべてネットからお借りしました。
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