復讐するは我にあり(西口彰連続殺人事件)
金田一耕助シリーズのDVDを見ている内に、なぜか無性に昭和の映画が見たくなった。というわけで『天国の駅』と『復讐するは我にあり』を見てみた。
どちらも初見。『天国の駅』は日本閣殺人事件を元に作られたもの。日本閣事件は個人的にすごく興味をそそられた事件で(というとちょっと言い方は悪いですが💦)書籍も色々読み漁ったが、映画はかなり美化されている印象で正直イマイチ。
しかし『復讐するは我にあり』は色々とすごかった。小説は以前読んだことがあったけどそれもだいぶ昔だったし、正直あまり印象が残ってなかったのだが。
まずはモチーフとなった西口彰連続殺人事件の概要についてはこちらのWikipediaを見ていただきたい。
西口彰の犯行はすべて金欲しさからだ。映画を見ていてもおよそ『人情』のようなものが感じられない。
福岡で専売公社職員2人を殺害したのを皮切りに、全国をまわり合計で5人もの人を殺害。
この福岡での2人の殺害シーンは・・・エグかったです。見るの結構つらかった。
まずは58歳の顔見知りだった男性を『近くに知り合いがいるから、酒を飲みに行こう』と誘い、ハンマーで頭を滅多打ちにして殺害。
かぶっている帽子が血に染まっていくところなんて本当にリアルで😭
殺される前に『これ家族にお土産になるかな?』とか『まもなく定年だから』なんて会話を榎津(劇中では西口は榎津という名前になっています)と交わしているシーンがあって、この年齢まで一生懸命家族のために頑張ってきて、こんなつまらない理由で殺されてしまうなんてと思うと余計に胸が痛くなった。
殺し方もまた残忍なんだもの…
ちなみにこのシーン、榎津を演じた緒形拳さんは『まるで西口の魂が自分に降りてきたようだった』と語っていたらしい。どおりでえらくリアルだったなぁと💧
その後、運転手だったもう一人の30代の男性も出刃包丁で刺して殺害します。
一人目を殺した後、二人目の運転手の男性を殺しに行く前に雑貨屋に立ち寄り出刃包丁を買うシーンがあり、『一番安いのでよか』というセリフにゾッとしましたよね…。
運転手の男性は運転中にいきなり榎津から首を出刃包丁で刺されるんですが、『娘がいるんだ、命だけは助けてくれ』と懇願。『病院に連れていってやるから言うとおりにしろ』なんていいながら、結局最後には包丁でめった刺しにして殺害する冷血っぷり。
実はこれらの撮影、実際に犯行が行われた場所で行われたというからびっくり💦
今村昌平監督はリアル!をとにかく追及していたらしいけど、後述する老人弁護士のシーンでも実際の犯行現場となったアパートの向かいの部屋を借りて、そこで撮影されたというから驚き(事件現場の部屋は家主が断ったからなのかなんなのか、無理だったらしい。そこで間取りも同じの向かいの部屋に頼んだところ、そこの学生さんが監督のファンだったとかで快く貸してくれたのだそうだ)。
ちなみに静岡の浜松で母娘を殺した際の現場となった『貸し席ふじみ』も映画撮影当時は現存していて、すでに新しい住人が住んでいたそう、そこでぜひ撮影に使わせてほしい!と申し入れたところ、『息子が受験を控えていて無理です』と断られてしまったので、泣く泣くセットを作っての撮影になったらしいです。いや、すごいな監督。苦笑
浜松に流れ着いた榎津は貸し席ふじみの母娘と親しくなり、41歳の娘とは体の関係も結ぶ。
映画の中では母親のほうは過去に殺人を犯した過去があるとなっていたけど、これはさすがにフィクションですよねぇ?💦
41歳の娘はるは心底榎津に惚れこんでいて、榎津の正体に気付いた後も警察に通報せず、一緒に生活し続ける。
・・・が、このはるをも無情に殺すのです。殺される直前までは普通に話をしたり、仲良さそうにしていたのにいきなり・・・殺される時のはるの、悲しいような諦めたような表情が悲しかった。。。
でもって監督…はるが殺された際の失禁とかもちゃんと再現してて、細かいところまですごいなぁ💧となった。
生々しかったけど、それほどまでにリアルを追求していたのかと。
母娘を殺した後に旅館のものを質屋に売ったりしているあたり、やっぱり金目当てだったのだろうか。この母娘の殺人だけは西口は動機を聞かれた際に『自分でも分からない』と答えたと言われていますが…。
ちなみにこの『貸し席ふじみ』の外観の写真はアフロというサイトで見ることができます。他にもアフロでは裁判中の西口や、最初の犯行現場となった場等等も見られますよ。
その後にも弁護士をかたり、裁判所である老人弁護士と知り合う榎津。
そのあと場面が変わり、
商店街のお肉屋さんでお肉を購入する榎津(余談だけど、こういう昭和の映画やドラマは当時の町の様子なんかも見れるから好き。こういう時代の建物だったり雑貨だったり好きなのです)。
ああ、弁護士先生と家ですき焼きでもつつきながら一杯やるのかしら。
…と思ったら
雑貨屋さんで金槌購入。ヒィィィィ、これ絶対帰ったら殺るやつやん😱
買い物袋を抱え、老人弁護士のアパートへと戻る榎津。前述したとおり、このアパートで実際に犯行が行われたそうです(ちなみにこの場所、今は別のアパートが建てられています)。ユーチューブのこたつさんという方の動画で現在の様子を見ることができますよ。
ああ、帰ったら殺るのかしら…。もう殺人シーンはお腹一杯なのだが…とドキドキしていたら
もう殺ってたんかーい😱😱😱
それにしてもこの弁護士先生役の加藤嘉さん、先日見た『八つ墓村(1977年版)』でも出てきて早々に毒殺される役だったんだけど、まさか『復讐するは我にあり』でも同じような役だなんて😅
ちなみにこの老人弁護士を殺害したのもお金や弁護士バッジ、裁判資料を盗むため。後に警察になぜ殺したか聞かれた時も『詐欺をするより、人を殺すことのほうが簡単だから。』と答えたというから恐ろしい。さすが裁判長や検事に『悪魔の申し子』『史上最高の黒い金メダルチャンピオン』と言われただけある…。
映画はそのあと榎津が掴まり死刑になり、彼の父親と妻が彼の骨を散骨するところで終わる。
さて、映画では端折られていましたけど、西口が捕まったのは熊本県玉名市にある立願寺の古川泰龍氏のもとを訪れた際、古川市の10歳の娘である、るり子さんに正体を見破られたからである。
るり子さんはいつも通学途中にある派出所に貼られた指名手配犯のポスターを見て、西口の顔を覚えていた。というのも西口の名前が同級生の男の子の名前と一文字違いで、印象に残っていたからだそうだ。
急いでそのことを親に知らせるも、『失礼なことを言うな』と怒られてしまう。しかし長女も派出所にポスターを見に行き、間違いないということで警察に通報。
この正体を見破るところから警察に捕まるまでが、以前アンビリバボーで再現ドラマになっていたけれど、本当に手に汗握る出来で見ていて鳥肌が立ったよ💦
それに後の供述で西口は元々この古川氏一家全員を殺し、金を奪うつもりだったらしい、もしるり子さんが見破らなかったら・・・😱
逮捕された後、西口は荒れていた時期もあったらしいが、その間も古川氏はずっと西口を援助し続け、ついには彼の子どもの学費まで援助したという。そんな古川氏と触れ合う内に西口の中には大きな後悔の思いが生まれ、過去の自分を悔やみ、そして古川氏への感謝を常に抱き続けていたのだという。
自分の息子が後に非行に走った際も『俺のようには絶対にならないでほしい』という手紙を送っている。父親として、せめて息子にはまっとうな道を歩んでほしい、そんな思いがあったのだろうか。
そして1970年に福岡拘置所で西口の死刑が執行された。享年44。
ちょうと同じ時期に免田事件で後に無罪となった免田栄さんも収監されていたが、『死刑当日の服も自分で用意し、覚悟をしていて潔かった。あんな死刑囚は後にも先にも彼だけだった』と述べている。
映画を見て、もう一度『復讐するは我にあり』を読みたくなったんだけど、父が読みたいというので実家に置いてきたのを忘れていた💦夏に帰省したら持って帰ってまた読もうっと。
ちなみに『復讐するは我にあり』の中国語は『復仇在我』。
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